この記事では、「浄水器」や「浄水型ウォーターサーバー」の必要性について解説しています。
「水道水をそのまま飲むのに抵抗がある」または、「浄水器を付けようか悩んでいる」、そんな不安や疑問を解消できる記事内容です。
浄水器の必要性はあるのか?
水道水には、ご存じのように「塩素(一般的にはカルキ臭と呼ばれる)」や「トリハロメタン(発がん性物質の可能性がある)」などの物質が含まれています。
結論をさきにお伝えすると、浄水器は、基本必要ありません(水道水が水質基準をクリアしている場合)。
その理由は、日本の厳しい水質基準によって、水道水の安全性が守られているからです。
水道水が安全な理由
①:日本の水道水は、水道法第4条を基礎とした水質基準で厳格に管理されている。
②:WHO世界保健機関では、塩素を生涯飲んでも健康に影響がない濃度を5mg/lと定めています。これに対して日本は、濃度1mg/l以下を目標にしている。
③:WHO世界保健機関と同様に日本でも、総トリハロメタンの基準値を0.1mg/L以下と定めていますが、日本(東京都千代田区)での実測値(水道水に含まれる総トリハロメタンの含有量)は、これよりもはるかに少ない0.015mg/Lという結果がでている。
≪結論≫
日本の水道水では、塩素とトリハロメタンがWHO世界保健機関の定める基準値より少ない実測値で検出されています。そのため、塩素と総トリハロメタンが人体に与える影響について過度に心配することはないでしょう。
浄水器が必要なのはどんな人?
前項では、「浄水器は基本必要ありません」と、お伝えしました。
しかし、浄水器を使用すべき人がいます。
それは、下記のいずれかに当てはまる人です。
- 水道水の不安を払拭できない
- 赤ちゃんに水道水を使用するのは気が引ける
- 水道管の老朽化が進んでいる一部の地域にお住まいの場合
- 集合住宅にお住まいで、建物内の給水設備や貯水槽が老朽化している。または、貯水槽が適切に管理されていない。
- 水道水の安全性は理解しているけど「万が一」に備えたい
①、②については、こちらの記事をご参考にしていただければ、大抵は解消できるでしょう。(解消できなかった場合には下記の結論をご覧ください)
③の場合
日本の水道インフラは、高度経済成長期に整備されたものが多く、老朽化しています。そのため、一部の地域では「水源の汚染」や「水道管老朽化による水質悪化」が発生。この問題を解決するには、多くの課題(人材不足など)が残されており、早期の解決は期待できないでしょう。
④の場合
集合住宅では、「建物内の給水設備」や「貯水槽」などの老朽化によって生じる、水質低下などが問題として挙げられます。とくに築年数が経過しているマンションでは、定期メンテナンスが必須となります。しかし、定期的な清掃や点検が適切に行われていないケースもあるので、注意しなければなりません。
⑤の場合
「万が一に備えたい」というのは、水道システムなどのトラブルを意味します。
例えば、水道水の水質検査結果は、サンプルを採取してからある程度の時間を要します。つまり、「水質基準値を超過した水道水とも知らずに飲んでしまう可能性がある」、ということ。
実例を踏まえて解説していきます。
▼下記の事例は、ガソリンスタンドが原因となったもの
北海道(室蘭市)で国の基準を上回る「ベンゼン(発がん物質)」が水道水から検出された(令和4年/7月)
この事例は、ガソリンスタンドから漏れ出たガソリンが土壌に染みこみ、水道水を送る「塩化ビニル管」や「ポリエチレン管」などの屋内給水管に浸透した、というもの。
そして、何も知らない付近の住人が国の基準値を上回る「ベンゼン(発がん物質)」が含まれた水道水を口にしました。
こうした「万が一」のトラブルを避けるには、ベンゼンまで除去してくれるフィルター(カートリッジ)を搭載している「浄水器」や「浄水型ウォーターサーバー」、あるいは「市販の水」を利用するのがいいでしょう。
結論
水道水の不安を抱えている人は、その不安を軽減できる「浄水器」や「浄水型ウォーターサーバー」などを利用することを強くオススメします。コストが掛かってしまうのは痛いですが、万が一の水道トラブルが発生しても、被害を抑えることに繋がりますし、水もおいしくなるので一石二鳥です。
浄水器のフィルター性能
ここでは、「浄水器や浄水型ウォーターサーバーは、本当に除去できてる?」、そんな疑問を解消していきます。
まずは、「家庭用品品質表示法(消費者が安心して使用できるようにするためのもの)」における浄水器の定義を確認しておきましょう。
定義
消費者庁|浄水器
- 飲用に供する水を得るためのものであって、水道水から残留塩素を除去する機能を有するものに限る。
- 業務用、非常時用、アウトドア用、浴槽用、シャワー用や河川水や井戸水を原水としているものは除く。
- カートリッジ等についても単体で販売される場合は対象となる。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/zakka/zakka_34.html
つまり、「水道水に含まれる残留塩素を除去できないものは浄水器として販売できない」と、いうことです。
また、家庭用品品質表示法が定める浄水能力の除去対象物質は塩素だけではありません。
▼除去対象物質(全12種)
- 遊離残留塩素
- 濁り
- クロロホルム
- ブロモジクロロメタン
- ジブロモクロロメタン
- ブロモホルム
- テトラクロロエチレン
- トリクロロエチレン
- 総トリハロメタン
- 2-クロロ-4・6-ビスエチルアミノ-1・3・5-トリアジン
- 2-メチルイソボルネオール
- 溶解性鉛
引用元:消費者庁|浄水器(5.浄水能力)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/zakka/zakka_34.html
以上の物質が同法律で定められている除去対象物質になります。
除去率はどのぐらい?
また、浄水能力(家庭用品品質表示法に基づく)については、下記のように定めています。
「除去率80パーセントである旨」「JIS S3201、又は同規格の付属書Aに基づいて測定した試験結果である旨」を付記する(許容範囲は、表示した総ろ過水量に対して-10%以内)。
消費者庁|浄水器(5.浄水能力)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/household_goods/guide/zakka/zakka_34.html
平たく言えば、「既定の測定方法で行われた結果が、水道水に含まれる塩素等の物質を80%以上除去できたことを消費者に伝えなさい」という意味です。すなわち、少なくとも最低限80%の除去率は保証されていることになります。
フィルターには異なる性能がある
「フィルターの種類(ろ材)」や「使用するフィルターの本数」などによって、浄水能力が異なります。
ここでは、家庭用浄水器で使用されることが多いフィルターを4つご紹介。
- 活性炭フィルター:水の味や匂いを改善し、塩素やトリハロメタンなどの物質を効果的に除去
- セラミックフィルター:耐久性が高く、微生物(細菌など)の除去に効果的
- 中空糸膜フィルター:高い浄水能力があり、微生物や微細な汚染物質の除去に優れる
- 逆浸透膜(RO)フィルター:非常に高い浄水能力をもち、純粋に近い水が得られる
①~③のフィルターは、「除去率:80%のものが主流」です。特徴は、ミネラル成分を残し、それ以外の物質(塩素など)を除去できること。
④のフィルターは、「除去率100%の浄水能力」があり、ミネラル成分も除去します。また、「水質が悪い地域」や「特定の用途(赤ちゃんのミルク作りなど)」での使用にも適しています。
浄水器を選ぶ前に知っておくべきこと
ここでは、「浄水器」や「浄水型ウォーターサーバー」、「浄水ポッド」を選ぶときに気を付けたいポイントをご紹介していきます。
▼3つのポイント
- 総ろ過量
- 交換時期
- 使用目的に合っているか
①総ろ過量
総ろ過量は、「フィルター寿命」のこと。
例えば、下記の浄水能力をもつ、浄水器があったとします。
- 総ろ過量:2000L
- 除去率:80%
この場合、水道水をろ過できる上限は「2000L」です。また、除去率80%については、2000Lを超過しなければ、その除去率を維持できることを意味しています。
②交換時期
浄水器によって、フィルターの交換時期は異なります。
下記のものが、一般的に多く出回っています。
- 3ヵ月 :1回
- 6ヵ月 :1回
- 12ヵ月:1回
③使用目的に合致しているか
浄水器に種類があることは、さきにお伝えしたとおりです。
例えば、赤ちゃんのミルクや水分補給、離乳食作りなどで使用したい場合には、ミネラル成分まで除去できるROフィルターを搭載している浄水器や浄水型ウォーターサーバーを利用するのがオススメです。
以上のようにご自分の使用目的に合致した浄水器を選択することが重要です。
浄水器を使用するときに注意すること
ここでは、浄水器全般の注意事項を確認しておきましょう。
- 毎日の使いはじめにコップ1杯~2杯の捨て水をする
- フィルターの交換時期を守る
- 定期メンテンナンスをする
- 浄水はなるべく早く使用する
①毎日の使いはじめにコップ1杯~2杯の捨て水をする
捨て水をする理由は、水の流れが止まった状態が続いてしまうと、浄水器の出水口に溜まった水が外気に触れ、細菌が増殖し、不衛生になるリスクがあるからです。
捨て水の一般的な目安は、「毎日の朝一番に行うこと」を推奨しています。
捨て水の量については、「コップ2~3杯」、もしくは「約10秒程」の出水が目安。また、浄水器によって捨て水の頻度や方法が異なることがあるので、取扱説明書を確認しておきましょう。
②フィルターの交換時期を守る
交換時期を守るのは、捨て水と同様に衛生的に使用するためです。
フィルターは、水道水に含まれる物質をろ過しますが、除去した物質は消えることなくフィルターに残ります。つまり、フィルター寿命を超過した状態で使用し続けることは、細菌増殖のリスクを高めることになります。
浄水器の役目は、
水道水の安全性をさらに高めること。
「浄水器を使用した方が水質が悪い」と、ならないために交換時期を把握して置くようにしましょう。また、交換時期とは関係なく、地域によっては水質の悪いところもあるため、交換時期を迎えることなく、目詰まり等が発生することがあります。
③定期メンテンナンスを行う
浄水器はフィルターだけではなく、本体も定期メンテナンス(清掃)が必要。
外装回りのホコリや汚れ、出水口や本体内部などを清掃します。浄水器よって、「分解できるもの」や「できないもの」がありますので、取扱説明書の記載通りにメンテナンスを行ってください。
④浄水はなるべく早く使用する
浄水は、塩素が除去されることで消毒効果が減少し、細菌による汚染に弱い状態にあります。そのため、なるべく早く使用するようにしましょう。
「冷蔵庫での保存期間」について浄水器協会(一般社団法人)は、『1日以内にご使用ください』、としています。
補足情報
≪水道水の保存期間≫
・冷暗所:3日間
・冷蔵庫:10日間ほど保存することが可能
浄水器と浄水型ウォーターサーバー
浄水器と一口に言っても種類はたくさんあります。「水道の蛇口に取り付けるだけのタイプ」や「浄水能力のあるウォーターサーバー」、「お手軽な浄水ポッド」などがあります。
ここでは、「一般的な浄水器」と「浄水型ウォーターサーバー」の違いを解説していきます。(浄水ポッドは除く)
結論からお伝えします、
大きな違いは、
冷水と温水が使用できるかどうか
- 浄水器は、水道水を安全に飲むことだけを目的にしたもの。
- 浄水型ウォーターサーバーは、水道水を安全にするだけではなく、冷たい水と温かいお湯まで使用でき、利便性が高い。
以上の点が大きな違いになります。
浄水器と浄水型ウォーターサーバーの浄水能力の差は、基本的にありません。利便性をプラスしたい方には、浄水型ウォーターサーバーがおすすめ。
まとめ
さいごに、この記事の要点だけを振り返っておきましょう。
浄水器の必要性について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
基本的に日本では、水道水の安全性の高さから浄水器は必要ありません、と冒頭でお伝えしました。
しかし、「国の基準値を上回る発がん性物質のベンゼンが水道水から検出された事例」があるのも事実。
水道水に限ったことではありませんが、100%安全なものはありません。自分の身は自分で守るしかないのです。
下記に当てはまる方には、浄水器は必要不可欠になるでしょう。
- 水道水の不安を払拭できない
- 赤ちゃんに水道水を使用するのは気が引ける
- 水道管の老朽化が進んでいる一部の地域にお住まいの場合
- 集合住宅にお住まいで、建物内の給水設備や貯水槽が老朽化している。または、貯水槽が適切に管理されていない。
- 水道水の安全性は理解しているけど「万が一」に備えたい
結論
水道水の不安を抱えている人は、その不安を軽減できる「浄水器」や「浄水型ウォーターサーバー」などを利用することを強くオススメします。コストが掛かってしまうのは痛いですが、万が一の水道トラブルが発生しても、被害を抑えることに繋がりますし、水もおいしくなるので一石二鳥です。